チラシ裏日記上等!!新館

Webアプリケーションエンジニアの雑記帳。映画とかアニメとかの記事も書きます。

虐殺器官を見てきました

映画「虐殺器官」を見てきました。Project Itohの第三弾。一時はちゃんと公開されるのか不安でしたが、ちゃんと公開されて良かったです。

リアルタッチで描かれるアクションがすごく、割と残虐な表現もちゃんとやっていたので凄かった。映画でしか出来ない感じがします。

以下ネタバレを含む感想。

リアルタッチな絵とアクションと残虐描写

まずリアルタッチな絵が動いてアニメーションになっているのが良かったです。虐殺器官は割とハードな話なのでこういう絵で動くととてもかっこよく見えて良いです。ガンアクションも激しく書かれているのですが、特殊部隊という性質上スマートに処理していっているのが印象的でした。感情を動かさず冷静に処理していく姿は、感情調整されている兵士であればこういう動きをするんだなと、小説で読むだけでは得られなかったイメージを与えてくれました。

残虐描写が多いのが虐殺器官の特徴だと思うのですが、イントルード・ポッドからの銃撃でミンチになる兵や、建物内で狂乱状態の少年兵との戦いなど描けるぎりぎりのラインで描ききっていたのが凄かったです。小説で「後頭部がラフレシアのように開いている少女の骸」という表現があるのですが、それを影で暗くしながらシルエットでそれとわかるように描いていたのが圧巻でした。本当に良くやりきったなと。小説内で一番しんどいインド編の戦闘シーンはかなりむごいのですが見応えは凄くありました。

虐殺器官世界のガジェットや兵器の表現について

ガジェットや兵器の表現はなるほどこういう感じかと、やはりこれも小説を読むだけでは得られないイメージを現実にしてくれたのが良かったです。

オルタナでランニング時にゴーストを出すとか、スーパーでの買い物に指紋認証を使うとか、小説ではなかったけど確かにこういう世界だとこういう感じだよねと世界観が補強された感じでとても良かったです。チェコでUSAを出すあたりもキーボードを板に表示したりして近未来感がありました。

光学迷彩やイントルード・ポッド、フライングシーウィードなども映像で見てうなりました。

光学迷彩攻殻機動隊ではおなじみなのですが、見えないんだけど注意して見ると揺らいでいるという感じが出ていて良かったです。最後の場面でウィリアムズが密かに入り口の前に来ているところは気づかない事もあるかも知れないさりげなさでした。イントルード・ポッドは足の筋肉感や、搭乗員が外に出た後で分解されていくところがうまく表現されていて良かったです。崩れて骨格だけになったポッドも出てきて、ここがわずかに残る機会部品なんだなとムダに感心しました。最後の場面で水中作戦使用のイントルード・ポッドはまんまイルカだったのが面白かったです。フライングシーウィードも表面のソフトウェアで制御されたひだ状のフラップというのが細かく描かれていたのがおもしろかったです。

溶けていくイントルード・ポッドやひだに覆われたフライングシーウィード、プラハに降り立ったミートプレーンなどは気持ち悪さとかっこよさのバランスがいい感じでした。

映画ならではの改変と、カットされているところ

ラヴィスの母親に関するところをばっさりとカットしているのと、アレックスが最初の作戦でおかしくなってしまうあたりが最初見ていてまじかーと思いました。

特に母親のあたりはクラヴィスの内面に大きく関わってくるところなのでいいの?と思いました。ですが最後まで見切ってこの流れだったら必要ないんだなと思うことが出来ました。母親のくだりがなくなるとクラヴィスは割と普通の主人公って感じなのですが、ここで母親関連の事をやってしまうと単純に要素が多すぎて破綻しちゃうだろうなとは思います。母親がらみのシーンは小説ではクラヴィスの内面を描くには大事な所ですが、虐殺の文法とそれを巡る話とは切り離すことができる所のように思えます。なのでなくて良いんだろうなと。ないおかげでスムーズになった気もします。

アレックスのあたりは結構良く改変されていたと思いました。映画のアレックスはグルジア語が理解できるので、そこで虐殺の文法の影響をうけてしまう。冒頭で虐殺の文法の存在がちらっと出るのは、あとでクラヴィスが虐殺の文法の存在を知ったとき脳裏にアレックスの奇行が浮かぶところでうまく生きてきている気がしました。このシーンを見たとき、バイリンガルでも虐殺の文法の影響を受けると知って、英語でその文法を使うことの恐ろしさを再認識しました。メイルシュトロムの影響は何となく英語圏の国だけだろうと思ったのですが、大体の国の人は英語が出来るのでそれ以上の被害なんだと今さらながら気づくという。すこし震えました。

あと、細かいところだと藤原豆腐店の下りとか、プライベート・ライアンの冒頭15分の話とかはさすがに出来ないんだなと思いました。これはまぁネタ的なところなのでなくても問題ないところですが、あったらちょっとにやりとできた気がします。

全体的な感想

小説が好きすぎるので、見た後ちょっと残念だなという気分にもなったのですが、やはりこの映画単体で考えると凄く良くできていると思うし、やっぱり見た人に何かを植え付ける物語なんだなと改めて思いました。ミリタリーアクションも凄かったし、残虐描写もちゃんと描ききる。娯楽といってしまうことにちょっと引け目は感じるのですが、見ていて面白い映画になっていたと思います。

この映画を見る前に小説を再読したのですが、また再読してクラヴィスがどうしてこんな行動を取ったのかをまたちゃんと考えてみたいなと思いました。

Project Ito の感想記事

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