チラシ裏日記上等!!新館

Webアプリケーションエンジニアの雑記帳。映画とかアニメとかの記事も書きます。

サルたちの狂宴を読みました

ちょっと前に話題になったシリコンバレーのIT業界の実情を描いた「サルたちの狂宴」を読みました。

サルたちの狂宴 上 ーーシリコンバレー修業篇

サルたちの狂宴 上 ーーシリコンバレー修業篇

サルたちの狂宴 下 ――フェイスブック乱闘篇

サルたちの狂宴 下 ――フェイスブック乱闘篇

作者はゴールドマンサックスからWeb広告のベンチャーに転職し、その後自身で会社を立ち上げる(しかもY-Conbinatorから出資される)。最終的には会社をTwitterに売却したのちFacebookに入社、しばらく働いて退職。というその字面だけみれば凄い経歴の持ち主である。

ところがこの本を読んでみるととにかく波瀾万丈で凄い。ざっくり概要だけ書くと、ゴールドマンサックスを見限ってベンチャーに入社するも後に沈みゆく船だと気づき、会社の仲間と新しく会社を立ち上げY-Conbinatorから出資をうけるも古巣から訴えられる。訴訟を乗り切ったあともプロダクトマーケットフィットを見つけられないでいる中、TwitterFacebookからの買収の提案があり最終的にTwitterへ会社を売却し、自身はFacebookに移籍する。Facebookで渾身のプロダクトを開発するも上層部の理解を得られず頓挫、その後Facebookを退社する。

とにかく困難に次ぐ困難で読んでいてとてもおもしろいやら辛いやら。特に訴訟のいきさつやTwitterFacebookとの駆け引きは手に汗握る展開でぐいぐい引き込まれました。章のはじまりに挟まれる引用の選び方も秀逸で、引用がその後の展開を予想させて良い演出だったと思います。IT業界のうんちくもふんだんに含まれていて、これからベンチャーを興したい人はアメリカの事例ではあるものの参考になる知識ばかりだと思います。あと語り口がとにかく軽快で、わかりやすいたとえ話や鋭く突き刺す皮肉など読んでいてにやりとすることが多いです。

全部を読んでの自分の感想ですが、どうしてこんなにこの人は頑張れるのだろうという作者への尊敬と、いくらイケイケのベンチャー(しかもシリコンバレー!)であっても闇が深く割と絶望も深いのだなという幻滅の気持ちがおり混ざった何ともいえない読了感をもたらす最高のノンフィクションだと思いました。

まず作者。とにかく頑張ります。訴訟されても弁護士との相談などに走り回ったり、資金調達もあらゆるところで頑張ります。買収の時も手を抜かないで会社を売り、創業した仲間をTwitterに入社させ、自身も自分の望む良い環境であるFacebookへの入社までこぎつけます。Facebookに入社した後もFacebookのために最高の広告システムを作ろうと奔走します。とにかく仕事に一筋でエネルギッシュなのが凄かったです。最終的には夢はたせずFacebookを辞めることになるのですが、ここまで戦い抜けるのは並の人じゃできないなと思わされます。

次にシリコンバレーの闇。Facebookというイケイケのベンチャーだったとしてもはっきりと社内に格差が存在し、社内政治も熾烈を極めます。ただ読んでいるとそんな中でもFacebookはいいほうだったようにも読めるのですが、それでも社内階級の話をみるとかなりげんなりします。これは組織というものがある以上、どんな会社でも避けては通れないものなのかも知れないなと思わされます。

輝かしいシリコンバレーの内実を知ることが出来る良い本だと思うので、IT関係に勤めている方やこれからベンチャーを興したい人、今ベンチャーでCEOとかCがつく役職にいる人は絶対に読んだ方がいいと思います。ここに書かれている辛く困難な道を自分でも行けると信じることが出来たらベンチャー企業を興す前段階は整っているんじゃないでしょうか。ちなみに自分はこの本を読んでIT企業でもエンジニア以外の仕事はごめんだなと思いました。