積んでから結構経ってしまいましたが魔性の子を読みました。
新しく十二国記シリーズとして新潮社から出始め、最終的には最新短編と長編まで持って行くというあたりがとても意欲的です。しかも挿絵まで新しく加筆修正もされていると聞いたら買わずにはいられませんでしたね。
この本のあらすじを軽く説明すると、教育実習のために母校を訪れた広瀬が高里という変わった生徒に出会い、高里の周りで起きる異変に翻弄されていくという話です。
広瀬は少し厭世的な節のある人で、高校時代はいろいろと悩みを抱えながら育った人物です。それが高里という孤立した生徒に会うことによって高里にどんどんと感情移入をしていき、高里を同じ故国喪失者だと思うに至ります。広瀬の恩師である後藤も広瀬と高里を似ているといいます。けれど広瀬と高里は決定的に違う部分があり、広瀬は話の後半それを自覚せざる終えない状況に陥っていきます。
後半で出てくる広瀬と高里の決定的な違いからくる広瀬が人間としての醜さが、高里との越えられないをとても感じさせ、高里の異質であるが聖人めいたたたずまいを際立たせます。最後の広瀬と高里との大きな隔たりが人と神聖な○○(まぁ十二国記シリーズと銘打ってあるから隠す必要もないけど一応)との差なんだなと改めて痛感させられました。
この小説は一応ホラーなんですが十二国記シリーズの1巻目ということでファンタジーにも数えられるのかなと思います。十二国記を一度読んでいるとこの小説はホラーではなくファンタジーとして読んでしまうので、十二国記を読んでいない人はそれを読まずに魔性の子を先に読むことをおすすめします。ホラーとして読むと、異界の住人との接触が巻き起こすカタストロフとして読めて違った味わいになると思います。そして十二国記を全て読み終わったあとに魔性の子を読むと、なるほどそういうことかと合点がいき想像も膨らむので二度読むことも強くおすすめしておきます。
さて、次は月の影影の海です。またしばらく時間をおいてから読むかそれともすぐ読んでしまうか悩みどころですね。